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国際宇宙大学日本卒業生会(JASI:Japanese Alumni Society for the ISU)
2004年夏期セミナー参加レポート(報告:関さん [JAXA] )

1.SSP04開催概要とカリキュラムの特徴

SSP04は、南オーストラリア州の州都・アデレードに世界27カ国から114名の学生(日本からは私を含め4名)を集め、2004年6月末から8月末にかけ、約9週間の日程で行われました。
カリキュラム内容について、最近のSSPの共通的事項は、他で色々と説明されていると思いますので、ここではSSP04で特徴的だった内容について紹介します。

デパートメント活動

コース前半に行われる講義は参加者全員に対して広く浅くあらゆる分野を扱いますが、それぞれをもう少し深く掘り下げた形で実習なども取り入れた勉強をするのがデパートメントです。SSP04では全員が8つのデパートメントのどれか一つに所属してそれぞれの活動を行いました。

ウーメラへのField Tripと観測ロケットの打上げ

例年、講義主体の前半が終わってから、後半のチームプロジェクト活動が本格化する前に、Field Tripと称される旅行(社会科見学?)が用意されています。SSP04でもアデレードから北へバスに揺られること6時間ほどのところにある、ウーメラ基地に3泊4日の旅行に行きました。そこでは2つのデパートメント”Space Engineering”、”Space Systems Analysis and Design”の活動の一環として、観測ロケット(本物!最高高度8kmまで上昇します)の打ち上げも行いました。私も”Engineering”に属し、ペイロードの製作、打上げオペレーションに参加しました。

チームプロジェクト活動

SSP04ではチームプロジェクトが3つ用意されました。それぞれ「TP Explore:月・火星への有人探査」、「TP Broad Band: 宇宙技術を用いた高速通信」、「TP Water: 地元の治水問題への宇宙技術の適用」が主題でした。私が参加した「Water」プロジェクトでは、地元・オーストラリア南東部に広がるMurray-Darling Basinの治水問題に対し、現在存在する、あるいは近い未来に計画されている地球観測等の宇宙ミッションを用いて、どんな貢献ができるかを調査・検討して、レポートにまとめました。コースの最終週に行われた最終プレゼンテーションには、実際に現地の治水関係者も招待し、プロジェクトからの提案を発表しました。

2.生活環境

期間中は、コースが行われた南オーストラリア大学、アデレード大学からほど近いホテルに宿泊しました。1年ほど前に出来たばかりの真新しいホテルです。基本的に2人1部屋の相部屋となっており、私は、アメリカの航空宇宙関連メーカに勤めるMichael Oelke氏とともに2ヶ月間を過ごしました。同年代ということもあってOelke氏とは気が合い、途中、お互いの家族も迎えて一緒にドライブに行くなど、すっかり仲良くなりしました。ちなみに、ISUは、今回のSSPの開催に先立ち、部屋割りを決定するための参考情報として、参加者個々の趣味・嗜好などを詳細に調査していました。気の合うパートナーを得たのも、そんな配慮のおかげかも知れません。

3.日々の生活

英語力の準備が十分とはいえなかったこともあり、コミュニケーションの問題には苦しみました。試験のプレッシャーなども加わり、特に前半は毎朝、ベッドで目覚める度に、「ああ今日もまた1日が始まってしまう」などと後ろ向きな気分になることもありました。しかしそこは気持ちを切り替えて、“泣いても笑っても、たったの2ヶ月”と思うことで切り抜けました。このような環境は人生のうちで1回あるか無いかの貴重な経験ですし、当たって砕けろ精神で色々なことに積極的にチャレンジするようにしました。特に、人前で行うプレゼンテーションの機会は大チャンスと捉え、出来るだけ自分の出番を作るようにしました。コミュニケーション力は後からついてきたように思います。(そのことに気づいたのは帰国後、元々通っていた英会話学校に復帰した時ですが) 

4.余暇の過ごし方

SSPのカリキュラムはなかなかタイトです。SSP04は隔週週休2日制でしたが、試験勉強やらレポート書きなどの課題を真面目にこなすには、放課後、休日ものんびりしていられません。(これは、各個の要領の良さやどれだけ真面目に取組むかにもよりますが) それでも、夜遅くからでもクラブに出かけ汗を流し、少ない休日にもタイトな日程で旅行に出かけるなど、雰囲気としてはとにかく貴重なコース期間中、せっかく知り合った世界中の仲間と精一杯楽しもうというエネルギーに満ち溢れていました。私も試験後のブレイクに、アデレードから車と船を乗り継いで4時間ほどのところにあるカンガルー島に、仲間と一緒に遊びに行きました。慌しい1泊旅行でしたが、南極からの(もちろん、冷たい)南風の吹きすさぶ壮大な海岸線の光景に心打たれました。また前述のとおり、コース後半に1週間ほど、妻と娘が遊びにきました。SSPではコース期間中、参加者やスタッフの彼女、彼氏や家族が遊びにくるのは珍しいことではありません。

5.SSPを通して見えてきた国際社会の縮図−等身大の日本像、欧州の結束力

30近い国から人間が集まり、言語・文化の壁を越えて日々生活し、学び、議論し、目的を共有し共同作業を行うといったコースは、国際社会の縮図といっても大げさではありません。9週間という短期集中で大変多くのことが詰め込まれていることも手伝い、その環境の「濃さ」は普通の海外留学をはるかに凌駕していると思います。
そんな環境で過ごす中で見えてきたのが、「等身大の日本像」です。昨今、経済力、科学技術力ともに国内ではその低下が嘆かれていますが、外からみれば依然としてその評価は高いと感じました。一方で、宇宙技術については想像以上に知られていないという印象です。また欧米とはかけ離れた独特の歴史や文化に対する関心や評価は大変高く、日本人に友好的に接してくれる人々は比較的多かったと思います。
もうひとつ、印象に残ったのは「欧州の結束力」です。EUの発展、宇宙分野ではESAによる国際分業制宇宙開発、実際に欧州の人々を見ていると、日本人参加者の一人、山中さんの言葉を借りれば「一緒になったことを楽しんでいる」様子がよく伝わってきます。過去数千年にわたりドンパチと戦争を繰り返してきた欧州の歴史を考えると、驚異的な歴史的変革期を目の当たりにしているのかも知れません。

6.おわりに

コース修了式の夜、翌日以降、世界各地に向け帰途に着くことになる仲間達ひとりひとりにお別れを言う段になって、不覚にも涙がボロボロ出てきて止まらなくなりました。三十路も半ばの男が情けない、と思いつつも、それだけ自分にとっては仲間と心を通じ合わせて頑張れた2ヶ月だったのだと受け止めています。仲良くなった人々とはコース後も時々メールで近況を伝え合っています。いつかまた、彼らと地球上のどこかで再開できるのを本当に楽しみにしています。

写真提供:宇宙航空研究開発機構
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